孤思庵の仏像ブログ

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東博彫刻室(第11室)陳列作品定期更新

2012年07月30日11:00
東博 彫刻室(第11室) 陳列作品が 定期更新されました。(この展示は7月18日~9月23日です)

各陳列作品に付けられたキャプションをご案内いたします。



適用 ●:国宝 ◎:重要文化財


 ①  菩薩像             平安時代・9世紀         佐野公一氏・佐野文一氏寄贈

 上瞼〈うわまぶた〉がふくらみ、やや沈んだ表情、厚い胸、ところどころ しのぎ立つ衣の襞〈ひだ〉など平安時代前期の特色を示すが、両肩から垂れて肘に掛かる天衣〈てんね〉の質感豊かな表現は奈良時代の乾漆像〈かんしつぞう〉にならうもの。一木造で内刳〈うちぐ〉りはない。近代の日本画家下村観山(1873~1930)旧蔵。



 ②  十一面観音菩薩立像    平安時代・9世紀         当館蔵  

 からだの中心部を針葉樹の一材で造る、一木造り〈いちぼくづくり〉の像。衣文の鋭い彫り、胸や腹の起伏に富む肉 づき、背を反らせた姿勢などに平安時代初期の造形の特色がみられ、優れた造形を示す。頭上面、両腕は後補。面部が彫りなおされているのが惜しい。



 ③  天王立像           平安時代・11世紀        当館蔵





 ④  釈迦如来坐像         平安時代・9~10世紀      当館蔵

 からだの中心部を針葉樹の一材で造る一木造り〈いちぼくづくり〉の像。いかり肩でやや肥満した肉付きと厳〈おごそ〉かな表情など平安時代前期の特色を示す。左腋〈わき〉下方にある渦状の衣文〈えもん〉は画像の表現を写したもので、この時代の像に多い。衣文が平行に整う点に和様〈わよう〉化への兆しがみられる。



 ⑤  不動明王立像       平安時代・11世紀      岡野哲策氏寄贈

 とかした髪をひと束結んで左肩に垂らし、両目を見開き、上の歯で下唇を噛〈か〉むという容貌は空海が中国から持ち帰った曼荼羅に基づく。空海が創建した京都・教王護国寺(東寺)講堂の不動明王も同様で、大師様と呼ばれる。頭の頂に蓮華を置いていたが、失われた。



 ⑥ ◎十一面観音菩薩立像   平安時代・9世紀        奈良・秋篠寺
 
 重厚な表情と変化に富んだ彫りのふかい衣文〈えもん〉が特徴的な十一面観音像。針葉樹材一木造〈いちぼくづくり〉で、内刳り〈うちぐり〉はほどこさない。衣文表現にくわえ、造作を下方に集めた顔だちや、背面で天衣〈てんね〉と条帛〈じょうはく〉がX字状に交差する形などにも、9世紀の檀像〈だんぞう〉系の作例に通ずるものがある。



 ⑦ ●四天王立像 広目天    平安時代・12世紀       京都・浄瑠璃寺

 平安時代の神将形を代表する美作として著名な四天王像中の1躯。この時期に流行した九体阿弥陀堂〈くたいあみだどう〉の現存唯一の遺構として知られる浄瑠璃寺本堂に伝来した。華麗な彩色彩色〈さいしき〉・截金〈きりかね〉文様に飾られた本体だけでなく、光背〈こうはい〉・台座〈だいざ〉まで造像当初の姿をよく残している。



 ⑧ ◎十一面観音立像      平安時代・10~11世紀    奈良・薬師寺

 薬師寺に伝わった十一面観音像。彫りの浅い平明な間隔に和風化が顕著であるが、両腕まで含め針葉樹の一材から彫り出す構造、変化に富んだ衣文〈えもん〉線など、平安初期の古様〈こよう〉を色濃くとどめる点に奈良の土地柄がうかがわれる。



 ⑨ ◎増長天立像         平安時代・9世紀          京都・仁和寺 

 宇多天皇が仁和4年(888)に創建した仁和寺には創建当初の本尊阿弥陀三尊(国宝)が伝来するが、それと同時に造られたと見られる像。小ぶりだが、袖の鋭い衣文〈えもん〉、甲の縁が反る表現、腹部と大腿〈だいたい〉部のふくらみ、腰を左に捻〈ひね〉って立つ姿に力がみなぎる優品である。


     
 ⑩ ◎広目天立像         平安時代・9世紀          福島・勝常寺

 福島県会津地方の古刹勝常寺〈しようじょうじ〉に伝わる四天王の一体。本体から邪気〈じゃき〉までをケヤキの一材から造り、内刳〈うちぐ〉りは施さない。量感ある力強い表現は平安初期彫刻の特徴をしめすが、その風貌〈ふうぼう〉や全体にみなぎる荒々しさには東北の地から生まれた土着的気分が感じられる。



 ⑪  不動明王           平安時代・12世紀         当館蔵

 髪は巻き毛で、右目を見開き、左目をすがめ、右下の牙を上に、左上の牙を下に出し、左肩に束ねた髪を垂らす形は不動明王の定型となった。着衣にほどこされる彩色・截金の文様は院政期の繊細なものである。玉眼を嵌める面部は後に造り直されたもの。ヒノキ材の寄木造。




 ⑫  阿弥陀如来坐像        平安時代・12世紀         当館蔵

 来迎印を結ぶ阿弥陀如来坐像は平安時代後期、浄土教の隆盛とともに流行した。小粒に整然と彫られた螺髪〈らほつ〉、薄い胸や腹(横からご覧ください)、穏やかな表情、そして薄く彫られた衣の襞〈ひだ〉など、典型的な定朝様〈じょうちょう〉(平等院本尊の作者定朝が完成した様式)の特徴を示す。



 ⑬  四天王立像          鎌倉時代・14世紀        当館蔵

 鎌倉期に再興された東大寺大仏殿の像に基づくと推定される、いわゆる大仏殿様〈だいぶつでんよう〉四天王像の一例。いま確認できないが像内に元徳3年(1331)の銘があるといい、鎌倉末期の基準作として貴重である。多聞天が兜をつけるのは、この時期にあらわれた変化形式。