孤思庵の仏像ブログ

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藝大 修復彫刻研究報告発表展 修了

藝大 修復彫刻研究報告発表展 修了

 
上段添付画像は【左】過日「薬師寺東京まほろば会」でお披露目された製作中の月光菩薩像  【中】東京国立博物館蔵 木心乾漆 日光菩薩日光菩薩半跏像  【右】デジタル技術を使って精巧に復元された 法隆寺壁画



東京藝術大学大学美術館 陳列館 で行われました「東京藝術大学大学院 美術研究科 文化財保存学専攻 保存修復彫刻研究室 研究報告発表展 」に、今年も19日(土)に行って来ました。

先の同行見学の募集日記に6名の方が呼応されました。

当研究室で昨年度(2013年4月~20143月)手掛けた、修復、摸告研究を中心に研究成果を展示発表がされました。

普通の仏像展覧会とは相違で面白いです。

当方メンバーの猛者連中が,いささか専門的に質問いたし、その担当者の応答に、近くの見学の方も聞聴きいってました。

見学後に、あるメンバー曰く、「今年は良くなかった」との印象を述べてました。

一つには仏像の摸刻に、著名・ノーマル仏像が少なかったことも挙げられるなどで、私も同様の感想でしたが・・・

しかし、塾考しますと、此処は大学院。院生達は課程を終えて終了し、また新たな新入院生が入ってくる新陳代謝が繰り返されて、同じような研究が個人を替えて繰り返しているのです。

私達も 最初の研究発表展には未知が多く、普通の仏像展とは相違で、初めて知る仏像修理と修学の摸刻は、とても新鮮でした。

そして毎年通い続けて、はや4年度度に成るでしょうか? 毎年の似た発表に新鮮さは無くなり、もう見学者としては熟知してきたのです。そろそろ此方も課程修了の時期かもしれません。(笑い) 

しかし一方、まだ見ていない人には、是非に一度はとお薦めしたいです。

今年は不調の感あるも、それでも収穫は幾つかありました。まず他とは相違の「製作」でした。これまでの発表は修理か摸刻でした。今回は製作でそのどちらでもない作品です。 摸刻は修作の為の「学ぶ」は「真似ぶ」で真似作成をしながらに学ぶことでしたが、今回はお寺(薬師寺)から東京別院に安置する脇侍像と中尊の台座の発注を受けての創作なのです。一応 薬師寺の金堂のあの国宝天平仏 金銅仏 薬師三尊像の脇侍が原イメージでありながら、その既に居られる中尊は鎌倉期の木製薬師如来で、表面の漆箔は殆ど剥落の体です。

その脇侍です。 それを新造は、どのように こしらえるかは難題でしたでしょう。 まずはモデルは金銅仏それをブロンズで無しに木彫は本尊との統一で、木彫に・・・其れには裏側に此処の教室の事情もありますまいか?これまでに、ここでの金銅製仏像製の摸刻は見ていません。 技術的にここでは金銅仏作成は難しいのでは?

木彫に落ち着いても、その表面仕上げです。摸刻なれば、古色仕上げも説得性がありますが、新造です。
そんなで私は昨年の状態の素地のままで良かったのではと思って居たのですが、今年の仕上げに驚きました。漆箔でなしに彩色仕上げなのです。紺丹緑紫の繧繝模様も有の天平古典彩色でした。


  http://www.sankeibiz.jp/images/news/140306/bsg1403062222008-p1.jpg  http://www.sankeibiz.jp/images/news/140306/bsg1403062222008-p2.jpg
上の画像は過日「薬師寺東京まほろば会」でお披露目された製作中の月光菩薩像 で現在の両脇侍はさらに裙などに金彩の模様が施されてました。


落ち着く色に調整されていても、艶やかな脇侍像は中尊蓮華座と共に中尊の古色とかけ離れ私には不調和と思えました。

これは東京別院に時々法話を聞きに行ってまして、薬師寺側からも、逐次に脇侍像の進行状況の報告を聞いてまして、素木の状態での報告雰囲気と、彩色がされてからのそのニュワンスが微妙に変って来たのではと下種の勘繰りをしています。

落ち着いた色にしてゆくとの報告がありましたので、古色を付けるのかと勘違いしましたが、展示の状態が引き渡しの状態の様です。 とても綺麗・・・その綺麗と言うが似合う彩色です。

かといって 他に決定打の妙案など在るはずもなく。最初から無理と云うか損な企画と思います。

展示品の説明トークでは触れない事を質問で答えられた内容にって、また冠、胸飾とその瓔珞にも条件下の限界の付く苦慮があった様です。

東京国立博物館日光菩薩と東京藝大美術館の日光・月光菩薩摸刻と部分復原摸刻は 両像に不統一の感を持ちました。顔つきもいささか違うようですが特に金箔の古色のニュアンスは別人の手かと思えるような相違がありました。両像元は一具ではあったもののその後の変遷は別途名なってますので違うのかと思ってました。 幸い近くの東博に現在オリジナル日光像が展示中でしたので、帰りに寄ってみました。 箔の摺れ(エイジング)は 全く似ていませんでした。
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東京国立博物館蔵 木心乾漆 日光菩薩半跏像


これは木心乾漆作りの修作で、修復でのエイジングまでの気は配らなかったようです。

あそこでの摸刻の展示は、オリジナルと並べられない有利さがあると認識しました。

でも過去の円成寺大日や東博所蔵の(玉唇とでもいうべき技法の)菩薩立像(善派作品)にはもっと感動してたと思いがあります。


京都 禅林寺永観堂ようかんどう と読むが正しい) の見返り阿弥陀の摸刻像は美しく、 一木造りに割剥ぎ造(一旦割離し後で接ぐ技法)を多用した像でしたが 一旦足を切り離しての技法は知っていましたが、衣文線に沿っての小刀での割りはぎは初めてでして、その苦労がしのばれました。 今回衣文に沿っての横方向への割り剥ぎもある事を知りました。

 
その摸刻像と そのオリジナルを載せます。


見返りの首が向きの方向の左に寄り過ぎが不自然と思い友達に首を捻って貰い、これで良いのだと確認しました。つまり首の回転は真ん中の中心で回転するに非ず、つまり頸椎は真ん中に在らずで、後ろ側に在るので捻った時に頭は向きの方向寄りに成る事を再認識しました。気が付かば馬鹿なのでした。

余計な事ですが、この見返り阿弥陀は「永観、遅し」と先を歩く阿弥陀像の逸話の方が有名ですが、 見返り阿弥陀の本当の意味は念仏信者を迎えに来て、連れて極楽浄土へ導き引きとる時を「帰り来迎」と言って その際阿弥陀如来が臨終信者が無事についてきているか案じて振り返る様だそうです。
 


長野県 興勝寺 薬医門桁彫物「子持ち龍」摸刻は宮大工の建築彫物と 今での仏師とは別の職芸でこの分野もあったと気付かされました。 聞けば8年職人をした後で藝大に入ってきたそうで、別の技を感じました。
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修復、の方では千葉県 那古寺 阿弥陀如来坐像 修復では 釘穴鎹穴への釘打鎹打ちはそのまま打たずに補填新材を嵌め込み それに打ち込むそうです。

東京都 個人蔵 天部修復では 一木造り 蓮肉や邪鬼の像底部は、平であったものが その材の中心部分は盛り上がってくる傾向があるそうで、 時にその盛り上がりを計算にいれ フラットでなしに中心を凹ますように削り込むそうです。 干割れや背割りは知っていましたが木材にそのような癖があるをはじめて知りました。 


なんだかんだ言っても実践に像を彫る人、直す人には教えられます。

★藝大 修復彫刻研究報告発表展 まだの方は一度は行ってください!仏像の裏側中側が知れます。



【追記】 21日の朝のNHKTV二ュースで、 「法隆寺金堂の壁画 最新技術で復元」

 国宝に指定されている奈良県法隆寺の金堂に描かれた壁画で、60年余り前の火災で焼けてしまった日本最古の仏教絵画が、最新のデジタル技術を使って精巧に復元され、4月、藝大で公開されることになりました。

担当教授は宮廻正明教授との事で 東京藝大の 教員総覧で見てみましたら所属

大学院美術研究科 文化財保存学専攻
職名

教授
社会連携センター長
学長特命
研究分野

保存修復(日本画
 
と在りました どうやら東京藝術大学 大学院美術研究科 文化財保存学専攻 保存修復日本画研究室 と云うのもこの日記の前段記載の藪内教授の研究室 保存修復彫刻研究室と並列する研究室の様です。

されば この研究発表は彫刻に限られた範囲という事に成る。 今まで大学院美術研究科 文化財保存学専攻と混同していたきらいと云うより誤解があった様です。 そう思うと発表に 合点が行きます。



尚 その復原壁画の公開は

2014年4月26日(土)-6月22日(日)
東日本大震災復興祈念・新潟県中越地震復興10年
法隆寺-祈りとかたち 」大学美術館
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と同時に 陳列館にて 「別品の祈り-法隆寺金堂壁画-」 として公開されます。 

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