孤思庵の仏像ブログ

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仏頭展 の(脇役的存在)弥勒菩薩半跏像 考

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2013年09月27日12:15
写真 〔左〕仏頭展ポスター   〔中〕木造弥勒菩薩半跏像  〔右〕法相曼荼羅図 



国宝興福寺仏頭展 仏像の出品中 メインは仏頭と云うパーツと、板彫りの十二神将。辛うじて鎌倉期の寄木十二神将、これも何時もの仏像の慈悲の表現とほど遠い、大将たちの一具の群像です。

そんなで、何時もの展覧会と相違していまして、狭義の仏像らしいは一体だけです。

筆頭展示の厨子入り木造菩薩半跏像です。

何故この仏像が筆頭に展示されているか一考してみました。

弥勒菩薩です。彼尊はまず未来仏を思いますが、もう一面、弥勒菩薩上生経に説く上生信仰(弥勒菩薩が常に説法を続ける兜率天へ往生を願う)が在ります。

良く知られているのは弥勒菩薩(梵名マイトレーヤ)は釈迦の弟子で、釈迦に見込まれて遠い未来にこの娑婆に如来として再来して衆生を済度するだろうと授記( 仏が弟子に対して成仏の予言をすること。)された事ですが・・・、そこでもう一つ弥勒菩薩について、広くは知られてない事が在ります。紀元後の3世紀頃にマイトレーヤ弥勒菩薩)は、実在したと云う説です。

実在の人物であるかどうか疑問視する説も在るようですが、インドの瑜伽行唯識学派の論師として唯識説を説く開祖の一人とされていて、後世の伝説によって、上記の未来仏としての弥勒菩薩と同一視されます。

此処で興福寺を考えますと同寺は法相宗で、法相宗の根本教義は「唯識」(この世の事物・現象は、客体として実在しているのではなく、人間の心の根源である阿頼耶識が展開して生じたものであるとする思想。)なのです。

ですから弥勒菩薩なのです。興福寺の北円堂には本尊として唯識の元祖の弥勒仏の坐像(運慶指揮・源慶 他 作)が安置され、その脇には、唯識学派を大成し、開祖とされる無著の立像(運慶指揮・運助 作)と世親の立像(運慶指揮・運助 作)が安置されています。興福寺唯識・法相の寺を示しています。

ついでに南円堂についても云うなれば、本尊は不空羂索観音坐像(康慶と弟子 作)不空羂索観音春日神本地仏(鹿皮を肩に纏い、春日の神は常陸から鹿に乗って来た)そして同じ堂内には法相六祖(法相関係の我が国の六祖)の坐像一具(康慶 一門 作・ 現在、興福寺国宝館所蔵)が以前は安置されて、藤原の寺と法相の寺とを象徴しています。

もう一つ 金堂についても云うならば、今回仏頭展の舞台は東金堂でして、その本尊は東方瑠璃光浄土の薬師如来、 中金堂は仏教の開祖釈迦如来で、残る西金堂は言うまでもなく西方極楽の阿弥陀如来となっています。(西金堂の興福寺のもう一つの仏頭は、西金堂火災の際にの首だけ救い出された阿弥陀の頭でして、ながらく成朝作と思われてましたが、近年は運慶作と判明してます)

斯様に、私も遅まきながら、各宇堂に安置される仏像の配置や意味づけをようやく考えるようになってきました。

肝心のこの仏頭展の筆頭展示の「厨子入り木造菩薩半跏像」についての戻ります。前述のごとく興福寺は 法相  唯識 弥勒信仰のお寺でして、 そこの僧たちも弥勒信仰の兜率天へ往生を願う上生信仰を持っていたようです。
 
また、その扉に描かれた高僧たちを前回鑑賞時には注視しませんでした、次回 再鑑賞の時には、吟味したく思います。
 
http://www.kohfukuji.com/property/cultural/images/ph_048.jpg

厨子をよく見ますと天井には飛天の丸彫りが吊るされて居まして、飛天の飛遊する様が演出されています。これは弥勒の浄土、兜率天の再現であります。

またその扉に描かれた高僧たちも再鑑賞の折には、吟味したく思います。

弥勒像と云いますと古仏の半跏思惟像が多く、下生信仰の意識ですが、ここにあまり存在しない上生信仰の像として鑑賞したく思います。

上生、下生信仰と別々の信仰のように聞こえたかもしれませんが、来世弥勒のもと兜率天に往生の上昇信仰も、56億7000万年の後 その時に弥勒と共に遮那に再来し、弥勒の説法で得度すると云った信仰だそうです。


どちらかと云うとあまり接しない弥勒仏ですが、法相 唯識を考えるともう一つの弥勒の見方ができます。今展展示のNo9法相曼荼羅図やNo10の法相祖師像彩絵 厨子などスルーしてましたが、上述の事を念頭に再鑑賞したく思っています。 
             
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明日28日の「仏頭展 鑑賞の集い」、10月5日の「仏像愛好の集いin東博」にどなた様もお気軽にお出でいただき、懇談したく思っています。〔興福寺国宝仏頭展のパンフレットをお持ちの方はご持参ください〕 
 
両日の事は前の日記に詳細が在ります。お出でをお待ちしてます。