孤思庵の仏像ブログ

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曼荼羅展 講演会「曼荼羅のこころとかたちー装飾文様に込められた意味ー」受講

根津美術館で9月1日まで開催中の「曼荼羅展」の講演会「曼荼羅のこころとかたちー装飾文様に込められた意味ー」中村 幸真(種智院大学教授)を昨日24日に仲間5名と受講してきました。
 
氏は長年を費やし平成20年に西新井大師総持寺の両界尾曼荼羅を描き上げられました。
現在は種智院大学の教授で、権大僧正の僧籍にあられると紹介にあったように聞きました。
 
皆様も此処までは、講師が中年以上の剃髪の男性を想像されたことと思いますが、紹介の後、あらわれた講師は小柄で短髪で若く見えました。続いて発声の声色に驚きました。女性でした。自己紹介で62歳 パワーポイント操作のためにお嬢さんも端に来られてました。
 
講演の最初の言葉は、曼荼羅とは本来は自身の心の中に描くもの・・・しかしその為には知らなくてはとの思いで、絵筆で書かれたそうです。描く作業の前提に、勉強は必要とのことで豪い勉学精進をされたようです。
 
曼荼羅完成前になくなられた、西新井大師の先代貫主の以前からの要請で、曼荼羅完成後に、勉強された内容を書物にといわれてましたので「西新井大師曼荼羅NHK出版を書かれたそうです。その本は1,000円で西新井大師関係者にのみ配布された内向けの本であったようでして、どうにも入手困難な本のようです、実にに残念です。
 
最近、私等 仏友立ちが勉強し始めました両界曼荼羅、例えば頼富本宏氏の書籍とは切り口が全くの相違でして、- 装飾文様に込められた意味 - の副題通りでして、曼荼羅に描かれた諸尊の事は出てこずででして、一般の曼荼羅の講義・講演とは違ってました。概要は
 
①【瑪瑙宝瓶】金剛界曼荼羅には4個、胎蔵生曼荼羅には9個描かれている瑪瑙宝瓶、その賢瓶の意味、瑪瑙製である意味(邪悪が入り込めない),の解説がなされました。
 
②【チマタと結界】その瑪瑙宝瓶の描かれる場所がチマタ(岐・巷)で、道股の意味で、其処は(人間だけでなしに神や精霊・悪霊が行き交う場所、異界との接点、非日常的空間。)との説明でした。
 
③【結びと結界】「むすび」は陰陽相対的なものが和合して新しい活動を生む。古事記にも「産霊(むすひ)と書き・・・ 、むすこ・むすめ の語源も むすびひこ・むすびひめ とは驚きました。
結びは×+の形で結び目文⇒魔よけの護符文⇒種々の結び文へ展開《総角(あげまき)結び》⇒卍の結び目
 
④【チガヤと結界】金剛界曼荼羅の再外周の食堂に描かれる植物の宝生草・吉祥草⇒吉祥茅(厳密には違う植物ですが中国では仏典に説かれる吉祥草は吉祥茅とした)⇒我が国ではチガヤ(茅)⇒しめ縄=タブーを意味する縄(シメの語源=神がそこを占有している。しめなわは古代ではチガヤで作られた。)
吉祥草・吉祥茅はともにススキ化であるが、吉祥草を無尽蔵に尽きない植物と教義上の植物に衣裳化し宝生草と名付けた。これが曼荼羅を囲み結界としている。この唐草を吉祥茅と知る学者は少ないそうです。
 
余談ですが、吉祥草は吉祥茅はススキのように、うかつに触ると手を切る鋭利な葉を持っています、ですので我々がその上に坐したら痛いのでしょうが、それらは仏の座布団となっていて、仏たちには優しく柔らかく感じられるそうです。その話を聞いた時に、私は法隆寺金堂本尊の坐す姿に硬い物の上にではなく、柔らかい上に坐す様に見えるのを思い出しました。
 
 
最後に
≪漢訳の「曼荼羅」の語義≫の解説を受けました。
曼・漫・蔓(つる植物)-ひろがる、はびこる、ひろくゆきわたる
荼            -つばな(茅の花穂)
羅            -とりあみ(鳥あみ) (cf 網は魚用あみ)
 
今まで漢訳は音写で、意味はあまりないと思ってましたが、どの漢字を充てるべきかを考慮していたのを初めて知りました。曼荼羅研究に中国の陰陽道道教の思想を考慮されることはなかったようですですが、中国での曼荼羅が伝わったのですから、其処に中国思想が入り込むと講師は想い研究されたようです。
 
私はこの講義が大変に気に入りました。内容もさることながら…、いつもの受講のように、レジメにメモ書きする必要は無かったのです。そのようにレジメが素晴らしく 驚くほどに完璧でした。
 
 
その日の講演は午後からでしたが、その前 午前に友達との面談をしまして、そこでは自身がしてきた知識の伝達は、御節介で聞くものの迷惑と成りうるもと 自戒させられたりでしたが、この素晴らしい講演を聞いた後では、知った事で有用と思うものは、広く伝えたいとの思いに、また戻ってました。
 
●講演で講師は、本日の受講者には、このことを広く 周囲に教えてあげてほしいと言ってましたので、次回9月1日の「仏像愛好の集いin東博」では遠慮なくご披露いたしたいと存じます。是非にご参集ください。