Mさんからの投稿 「奈良博快慶展の関連情報」
「仏像愛好の集」のメンバーのMさんより 「奈良博快慶展の関連情報」 の投稿がありました。
以下Mさんの文章です。
Mです。
奈良博快慶展に関連していくつか皆様にお知らせしたいことがありますので、ブログに投稿します。
表題 : 奈良博快慶展の関連情報
明日4月8日からいよいよ快慶展が始まります。私も本日が前売り券発売の最終日ということで、あわてて近所のコンビニで購入しました。先日の集いでは出品作のうち有名作品でないものを中心に資料配布と説明を行いましたが、その後いくつかの情報がありましたのでお知らせします。
1)キンベル美術館釈迦のパンフレット
7日に東博へ行ったら快慶展の新しいパンフレットがありました。表側は私が今回の展覧会で最も期待しているキンベルの釈迦の写真です。この図柄のポスターを製作したというニュースは聞いていたので、そのポスターの現物を見たいと思っていましたが、縮小版とはいえパンフレットも予想以上に素晴らしい出来でした。A4用紙を縦に2枚つないだ長さ(60cm)の2つ折りで、長さいっぱいに釈迦の正面全身、頭光から蓮華座までを載せています。衣表面の截金文様まではっきりと分かる高精細画像です。この像のカラー写真は『小学館新編名宝日本の美術13「運慶・快慶 」金子啓明著』に出ていますが、今回のパンフレットはその2倍の大きさです。パンフレットの出来がいいので、品切れになるかもしれませんから、見かけたら確保しておくことをお勧めします。なお、私も何部かもらってきたので、もし手に入らないという方がおられたら、6月の仏像の集いの時にでも差し上げます。(5/6は欠席予定)
2)雑誌「目の眼」の快慶展特集
現在発売されている美術雑誌(油絵の購入や画廊関係の情報誌?)「目の眼」の5月号(No.488号)に快慶展の特集が載っています。14ページに渡る紹介で、文章の執筆は多摩美の青木淳氏。全ページカラーで、特にいいのは京都・悲田院の宝冠阿弥陀の写真です。光背から台座までの斜め前全体写真(1ページ大)、顔のアップ、同体下半分の3枚ですが、従来この像のカラー写真としては平成24年大津歴博特別展「阿弥陀さま」の図録に載っている15cm大の正面全身写真ぐらいしかなかったので、今回のアップの写真は貴重です。まばら彫りの頭髪や天冠台などもよく分かります。この他、奈良西方寺阿弥陀の顔のアップ(1ページ大)、彦根・圓常寺阿弥陀の斜め前全身(1ページ大)もあります。また、小さな写真ですが、伊豆山浜生活共同組合の二菩薩(耕三寺宝冠阿弥陀の脇侍四体―法・利・因・語の四菩薩のうち2体)や京都・青蓮院のトバツ毘沙門天のカラー写真もあります。
余り発行部数の多くないマイナー雑誌のようですから、大きな書店でないと扱っていないかもしれません。1,200円+税。
3)快慶展の出品作のうち情報がなかったもの
出品作リストNo.53静岡・鉄舟寺菩薩坐像、No.84大阪・藤田美術館阿弥陀如来立像(ともに未指定)については手持ち資料では情報が全くなかったので、芸大の図書館で調べてきました。静岡の仏像関係の本、静岡の文化財の本、藤田美術館発行の大型図録など何冊かを確認しましたが、この2件は載っていませんでした。最近の調査で快慶周辺の作品と判明したものかもしれません。あとは展覧会図録を見て確認するしかありません。
4)大阪市立美術館特別展「木×仏像」の情報
この展覧会も同じ4/8から開催で、本日7日に出品作品リストが公開されました。(下記アドレス)
集いの会員で快慶展に合わせて大阪市立美術館に行く方もおられると思いますので、出品作についていくつかの情報を書きます。まず展示替えですが、4/1の集いの時にも報告したように、展示替えは唐招提寺旧講堂木彫群のうちの薬師如来と獅子吼菩薩の2体が前期、後期で入れ替わるだけで、その他の作品は全期間展示されます。この2体はお寺に行けばいつでも見られるので、これによって行く日を決める必要はないでしょう。その他の作品のうち、あまり展覧会に出ないような作品としては以下の8件に注目しています。(全て木造)
素地のままで漆箔、彩色を施さない。寸詰りの体型がユーモラス。
体内から御衣木の断片が発見された珍しい例。桧材割矧ぎ、漆箔。定朝様の穏やかな作風。
寄木作り、漆箔、玉眼。比較的例の少ない転法輪印の阿弥陀像。
やはり大阪のものが多いようです。これらは全て重文指定品であり、未指定品や県市指定品も出品されますが情報がないので、書けるのはこれぐらいです。大阪・孝恩寺(釘無堂)や滋賀・櫟野寺からも出品されます。
これらのうち月刊文化財の解説記事を持っているのは①⑤⑦の3件(それ以外は指定時期が古いので解説記事はなし)、⑤の誓光寺十一面観音は奥健夫氏の書いた仏教芸術292号(平成19年)の論文もあります。その他の資料としては毎日新聞社「重要文化財」の簡単なデータぐらいしかありません。
特別に重要な作品はありませんが、あまり見る機会もないような像も多いので、私はできれば行きたいと思っています。⑤は平成19年の新指定特別陳列の時に東博で見ています。
5)奈良博快慶展と東博運慶展
東博ニュース4―5月号に運慶展の案内が出ています。「父康慶、実子湛慶、康弁ら親子3代の作品を揃え、作風の成立から次代の継承まで」ということが初めて書かれています。これは思うに運慶の作品だけでは展覧会を構成しきれないために、範囲を広げたのかという気がします。快慶展では快慶本人の作品が展示の中心であり、弟子行快の確実な作品は京都・極楽寺の阿弥陀1件だけ。それも快慶の没年が判明した作品という点からの展示です。そして、快慶に近い作品(青蓮院のトバツ毘沙門天、バークの不動明王、静岡新光明寺の阿弥陀、知恩寺の阿弥陀、勝龍寺の菩薩、益子観音寺の二菩薩等)を並べ、快慶の真作と比較できます。(旧玉桂寺、現浄土宗蔵阿弥陀は行快作と推定されているが、大津歴博寺島氏のように行快を専門に研究している人でも行快作に異論を唱えている人もいます。この像は快慶に近い作としての出品かと思われます。)一方、運慶展では噂通り運慶の真作を集めるのに苦労しているのか、親子3代の作品を並べるという方法を取らざるを得なくなったようです。興福寺南円堂の不空羂索観音や三十三間の本尊は大きすぎて無理ですから、それ以外の作品となると、静岡瑞林寺地蔵や雪溪寺毘沙門天、興福寺天灯鬼・龍灯鬼などが出ると思われます。東博ニュースに康勝の名前が書かれていないのが気になりますが、東寺の御影堂弘法大師像に是非ともお出ましいただきたいものだと思います。法隆寺金堂西の間の阿弥陀も近くで拝見したいものです。
(以上 Mさんの投稿文です)