孤思庵の仏像ブログ

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東京芸大の卒業・修了作品展について(慶派仏師の作品の模刻)

Mさんからの投稿です。
 
 
本日東京芸大の卒業・修了作品展を見てきました。(1/2631開催、下記アドレス参照)
今回薮内教授の保存修復彫刻研究室からは修士2名が京都府知恩寺百万遍)の阿弥陀如来立像と静岡県函南町かんなみ仏の里美術館(旧桑原薬師堂)の阿弥陀三尊像の脇侍観音菩薩立像の模刻製作を展示していました。知恩寺像は快慶の遣迎院阿弥陀東大寺俊乗堂阿弥陀に酷似した三尺阿弥陀函南町の脇侍観音菩薩は康慶、運慶一派の実慶作の銘がある像です。
 
今回の展示でも模刻製作者による解説パネルがあり、2名とも展示室にいたので、直接話を聞くことができました。知恩寺像の特徴としては、体幹部材に対しての両肩以下の部材の付け方として、体幹部材の下方で体側の部分が外側へ膨らんでいるということが上げられるそうです。遣迎院阿弥陀東大寺俊乗堂阿弥陀では体幹部材の側面が真直ぐ下へおりている、すなわち削りやすい(カンナをかけやすい)木取りとなっているが、知恩寺像では体幹部材の下方が側面側へ出ているため削りにくい木取りとなっている。ただ、快慶作品ではこの構造になっているものとして、大阪八葉蓮華寺阿弥陀があるそうで、この構造だけを見て快慶であるとかないとかは言えないとのこと。(技術的に難しい方法をあえて取っていることから、模刻製作者本人はこの像が快慶の弟子の作とは思えないという感想だそうです。)また、快慶銘のないこの知恩寺像をあえて模刻研究のテーマとして選んだのは、快慶と確定している有名作品ではないものに挑戦してみたかったためだそうです。(あえてこういう作品を選んで模刻研究としたことに拍手を贈りたいと思います。)
 
函南町の脇侍観音菩薩の方は、側面から見た前傾姿勢と割り矧ぎ線の関係に無理があり、勢至菩薩ではもう少し考慮された割り矧ぎ位置となっているため、観音で得た経験を勢至の時に反映させていると推定され、型紙のパターンがあって造像していると考えられている慶派仏師としては異例だそうです。
 
なお、今年の研究報告発表展は4/2024ですが、例年と比べ会場が変更になったため、報告会を実施するかどうかは現時点では未定とのことです。
 
 
知恩寺阿弥陀如来と桑原薬師堂阿弥陀三尊については、それぞれの研究論文を持っていますので、興味がある方はコメントまたは連絡いただければ次回集いに持って行きます。(岡山県就実大学紀要より土井通弘氏の論文、三浦古文化より水野敬三郎氏の修善寺大日と桑原薬師堂阿弥陀三尊の論文)
 
以上、Mさんからの投稿でした。