孤思庵の仏像ブログ

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Mさんから 投稿 「パラミタミュージアム長快作十一面観音鑑賞記」


Mさんから、パラミタミュージアムの長快作十一面観音立像を観てこられての 投稿がありました。 此処に掲載します。
 
1218日にサントリー美術館「水神秘のかたち」展に行き、パラミタミュージアムの長快作十一面観音立像を見てきました。
平日なので空いていて、ゆっくり鑑賞できました。絵画・工芸品はいろいろありますが、仏像彫刻としてはこの他に関心を引いたものはあまりなくて、東博に時々展示される弁財天坐像、神奈川瀬戸神社の神像5体ぐらいが目につきました。
 
その十一面観音ですが、パラミタミュージアム発行の報告書が売店にあったので、買ってから中に入りました。日本彫刻史基礎資料集成の該当部分のコピー、先日の集いで配布した美術フォーラム21のコピーと、これでこの像に関する資料(全て伊東史朗氏)が揃ったので、参照しながらの鑑賞となりました。
 
等身大より小さな像ですが、光背・台座まで入れるとかなり大きなものです。独立ケースなので、周囲から見ることができます。保存状態はいい方ですが、資料によれば後補部分も結構あります。後補は像本体では髻、化仏、頂上仏面、左手先、左手腕釧、持物(水瓶、錫杖)、宝冠、天衣(遊離部、垂下部)など。右手先、右手腕釧、両足、臂釧、胸飾り、頭上菩薩面10体は健全です。菩薩面が全て残ったのは貴重ですが、配置には混乱があり、場所は変わっているそうです。光背は頭光以外全て後補、台座は全て後補ですが、方座の形式は古式に則ったものです。(パラミタ発行の報告書では光背最下部の光脚については当初のものと書かれていますが、その後に出た日本彫刻史基礎資料集成では光脚も後補となっています。ともに著者は伊東氏)
 
頭上菩薩面と頂上仏面を合わせて11面あるのは長谷寺本尊(頭上が10面)と異なる点です。また、本来頭部と一体で作れるだけの材があるのに、面部が仮面のように矧いであること、頭部の内刳りと面部の内刳りがつながっていないことがX線写真で分かります。これは長谷寺の本尊を作った時に(大きいので当然面部は別材ですが)、仏面の作り方・取り付け工事方法として特別丁寧な扱いをしたこと(記録から分かっている事実)を模しているそうです。なお、横顔の表面を見てもこの矧面の線は分かりませんでした。
 
顔の表情は抑揚のないやや平板な作りで、これは六波羅蜜寺弘法大師と同じ印象です。弘法大師の横顔写真と耳の作りを比べてみましたが、像種が違い形が異なるので素人にはこれ以上判断できません。ただ、十一面観音の耳は形式的に整った形であるが、迫力とか実在する耳の温もりを感じさせるものではなく、この点はやはり快慶や行快と同じく「形式美」を目指す方向だと感じました。
 
長谷寺式十一面観音として現存最古の作は奈良伝香寺の地蔵菩薩像内納入品の像ですが、このパラミタミュージアムの像は建保の時の快慶作長谷寺本尊の姿を偲ばせる本格的な像であり、作者名が判明している点からも貴重なものです。鎌倉中期、建長の頃のやや形式化した作ですが、なかなか良い像であり、長谷寺式十一面観音というものを理解するには相応しいものだと思います。私も今回の一連の資料調査と実物鑑賞で仏師長快及び長谷寺長谷寺式十一面観音のことはよく分かりました。
次回集いではこの十一面観音の説明の続編を行います。


 
以上がMさんからの投稿文でした。 皆さんからのコメント付けを期待してます。」孤思庵