孤思庵の仏像ブログ

少し深くの 仏像愛好のブログ続けてます、オフ会に集ってます、貴方も如何?

Takさんの『藤田美術館の至宝…』展 報告

「仏像愛好の集い」のメンバーのTakさんが昨日21日にサントリー美術館の『藤田美術館の至宝・国宝曜変天目茶碗と日本の美』展に、行かれました。

自分もお供したかったのですが近隣の会合と重なり 果たせませんでした。今朝Takさんより、同展の報告のメールを頂きました。



以下Takさんからの報告メールの文章です。


サントリ―美術館は、「高野山展」以来ですが、何度来ても、いつも立派なビル群と最先端のショップの土地柄に、「おのぼりさん」状態です。
 
既に、開幕してから2週間ほど経っていますが、サントリー美術館の『藤田美術館の至宝・国宝曜変天目茶碗と日本の美』展に、出掛けて来ました。久し振りに天目茶碗はじめ、茶器、書画、仏画、装束など多くのジャンルの美術工芸品を一堂に集めた、立派な美術展に、少なからず興奮しました。
 
 明治時代に活動した、長州生まれで大阪の実業家・藤田傳三郎氏から二代三人にわたって、全国の仏教美術品や工芸品などが、明治初めの廃仏毀釈によって、散逸することを憂慮して、私財を投じて文化財保護に尽力し、他方で、茶道を趣味とした茶器・茶道具についても逸品を収集しています。今回は、主眼が曜変天目茶碗ではなく、快慶作・地蔵菩薩立像ということで、出かけて来ました。もちろん、茶器なども、じっくり鑑賞して来ました(まったく、美術・工芸的な歴史や価値は分からない素人なのですが、せっかくなので…)。
 
 お目当ての仏様は、会場入り口すぐに、単独で展示されていました。館内のほど良い照明と、ガラスケース内のLED照明で、四周巡る事が出来、かなり展示条件は良いものと、思われました。
 
 私としては、初めてお会いする仏様になるので、参考までに、東大寺公慶堂地蔵菩薩立像のカラ―写真と、図録解説のコピーを持参し、会場でそれを開きながら、鑑賞しました。他には、当像に関する予備知識はありませんので…。 
l  公慶堂像は、快慶法橋時代の造像作例、この藤田美術館像は、法眼時代の造像作例。時代は違いますが、よく似た造りの仏様です。
 
l  像高60センチという小像ながら(光背頂上部まででも90センチはないと思われる)、鮮明な像の姿、新舟形光背と呼ばれる周辺部に透かしの付いた、欠損の目立たない光背は、頭光背から出る放射光までついていて、よくまとまったお姿です。一瞥して、保存状態が良いせいか、感服するほどのお姿です。光背については、当時のままとか、後補の説があるそうですが、どちらにせよ立派できれいです。
 
l  色白の顔や上半身胸部が、他の仏様を見慣れた眼には、公慶堂像と同じように、異質な感じさえしましたが、両像の大きな特徴になっています。
 
l  顔部や両手、持物、胸飾などの各部分に、眼を移さなければ、まったく快慶・阿弥陀如来立像を、思い浮かべてしまいそうです。
 
l  全体に、腰を前屈させずに、右脚を心持ち半歩前にすり出した感じで、直立したまま前傾姿勢となっており、像の背中に付きそうに近く立つ光背も、同じ角度で前傾しています。
 
l  公慶堂像と同様の蓮華台座(白色緑色縁取り、この名称は?)で、雲乗しています。雲(残念ながら白色には見えません。薄茶色?)は、像の背後、光背の後ろにまで、大きく持ち上がり、たなびいているありさまが、はっきり表されています。春日三宮本地仏である地蔵菩薩が、来迎する形式で、興福寺に所縁の像との説を裏付けていると思います。
 
l  玉眼が施されているはずですが、外見上は、公慶堂像以上に眼が細く、下から仰ぎ見ても、オペラグラスでのぞき込んでも、はっきりと判別出来ませんでした。(LEDランプは使えず)
 
l  彩色は、袈裟は公慶堂像と同様の朱色(赤茶色)で、より色彩が鮮明に残っており、斜格子模様や截金文様も、公慶堂像以上により鮮明に見えます。腹部から脚部にかけての、袈裟の衣文は、両脇から絞られた感じで、U字形の波を打っているけれど、彩色・截金の印象が強いせいか、あまりはっきりとした彫りではなく、公慶堂像より浅い彫りのように見えます。
 
l  右肩に掛かる覆肩衣が、袈裟に掛かるところに出来るたるみも、大きくなく、初期の快慶阿弥陀像と同じ趣旨、共通の様式が表されています。
 
l  錫杖を持つ右手の高さが、宝珠を乗せている左手と同じ高さで、公慶堂像(右手が左手より高い)との違いが出ている感じです。
 
l  胸部に、非常に精緻な胸飾りが掛かっていますが、袈裟の吊り紐と合わせて、胸元を煩雑にしている感じで、右手の高さと同じになり、ごちゃごちゃとした、視点を減じているように感じます。
 
l  袈裟の文様が、右腕側、左腕側、左右脚部裙など各所で、違った意匠の文様をほどこしています。凝った作りの仏様になっています。
 
l  像背面も、丁寧な仕上げで、袈裟の背中に張り付いた衣文の様子や、截金文様も正面と同じように精緻に施され、彩色もきれいに遺っています。
 
l  光背は立派ですが、気になったのは、背面透かし彫りの部分に、頂上部分から両側下まで、13か所にわたって「種字」を表した小さな円盤が貼り付けてあります。後で出口の職員に聞いたところ、学芸員に問い合わせて下さり、種字は、地蔵菩薩を表すものではなく、文殊菩薩を表す種字だということを聞きました。つまり、像に付いている光背が、他の文殊菩薩像の光背であったことが分かりましたが、取り違えた理由までは、教えて貰えませんでした。今まで所有している美術館ですから、調査しているのでしょうか?このような組み合わせの保管になった経緯は、どうなっているのでしょうか?誰か学者さんが調べているのでしょうか?
 
l  ついでに、学芸員にもうひとつ聞いてしまいました。足枘の「開眼行快」銘表記について、開眼は開眼供養ではなく、像の玉眼の製作者であり、快慶の弟子の行快である、とのことでした。
 
 
〇 8月18日付のブログで、本像について、Mさんから、丁寧な文献資料の説明を、寄稿していただきながら、しっかり頭に入っていなくて、今日の会場で、学芸員にまで、手数をかけてしてしまいました。
 
〇 図録を見ると、本展では出展していない、阿弥陀如来立像(福岡市美術館106日(火)~1123日(月・祝)、金泥塗・截金、三尺阿弥陀)も、安阿弥様の、しっかりしたお姿の仏様のようです。
 
長くなりましたので、この辺で地蔵菩薩立像の鑑賞報告を、終了いたします。 諸兄のご意見・ご教授をお願いします。
 


 
阿弥陀如来立像(正面)  福岡会場のみ出展
http://ic.mixi.jp/p/8f0d3e579a78e8efa9c3005684347a8806cf9f2cd4/55da4cce/diary/1945397116_30s.jpg  図録からの画像をUPしたのですが、肖像権の関係で抹消されました。



 
阿弥陀如来立像(側面・背面・截金部分) 福岡会場のみ出展
http://ic.mixi.jp/p/92104e62c96230bbaec7057dbd8c16c9bd104ff726/55da4d4e/diary/1945397116_158s.jpg 図録からの画像をUPしたのですが、肖像権の関係で抹消されました。






地蔵菩薩立像(正面)
http://ic.mixi.jp/p/8f8f7741bbef64a9dcf614948c5dbcfb5e40e5a6a7/55da5083/diary/1945330548_199s.jpg  図録からの画像をUPしたのですが、肖像権の関係で抹消されました。






地蔵菩薩立像(側面・背面・截金部分
http://ic.mixi.jp/p/cf4f035270e5fb158db52da9518ce75fd32c29ff6a/55da4d16/diary/1945397116_102s.jpg の画像をUPしたのですが、肖像権の関係で抹消されました。



【cf】 本文中にも触れられてますが、以前の8月19日のブログ Mさんから 寄稿 「藤田美術館快慶作地蔵菩薩について」でも投稿を頂いてます 参照してください。

これから同展に行かれる日程をお持ちの方が在りましたら 情報お寄せ下さい 広報でご一緒を呼びかけたいと存じます。