如来立像と地蔵立像　　衲衣の膝前の衣襞

前の日記「安阿弥様て　どんな様式？」で快慶作の阿弥陀と地蔵の膝前の衣襞について書かせてもらいましたが、　快慶に限らずで、衲衣姿の膝前衣文、その縦に流れるのと、横に流れる　衣襞について、自分なりの仮説を想定して、ネット画像検索しながら調べてみました。

飛鳥・奈良時代の如来立像で金銅仏が多く、その膝前の衣襞は弧を描き横に流れる衣襞です。
(東博法隆寺宝物館蔵) 如来立像 N149・（聖衆来迎寺）薬師（以下如来立像は省略します）・（新薬師寺）香薬師

続いて奈良末から平安時代前期には太腿に衣文なしでその脇に縦に衣襞の木彫が出ます。
（唐招提寺）伝薬師・（神護寺）薬師・（元興寺）薬師・（唐招提寺金堂）木心乾漆薬師・（室生寺）薬師　釈迦

平安中後期の如来立像はめっきり少ないです。

鎌倉に入り来迎の阿弥陀が立像に成ってきます。絵画の方ではその膝前の衣襞は横流れの様です。　彫刻の仏像は三尺阿弥陀快慶の
安阿弥様が多くつくられ、それは笹の葉がずれ重なるような縦流れの傾向にあります。
遣迎院　安養寺像・東大寺公慶堂などの安阿弥様三尺阿弥陀

こうして、著名遺作仏像を見てくると、如来立像の膝前衣襞は、奈良時代までは、横流れで、それ以降は縦の衣襞が主流と傾向が見見えてきます。

まだ集約途中で仮説そのものです。しかし、阿弥陀の殆どは縦　衣襞で、横襞の尊は釈迦が多い様に思えました。

今はまだ予感想像なのですが…、上記の件は清凉寺式釈迦が影響しているのではないでしょうか？　それと時代が下がっての膝前が横流れの如来衲衣には、擬古的ですので当然でありますところの善光寺式阿弥陀があります、それと宋様の影響を受けたものがありまして、それらで殆どかと思いました。

してみますとやはり鎌倉時代は、生身仏像などの写実的と云いがちですが、そればかりでなく、色々な様式が豊富な時代と思い知ります。

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この膝前衣文の流れの注目ですべきは二尊院の並列本尊　釈迦と阿弥陀の立像です。これほど端的な実例は無いです。二尊が並立するので区別が付けたくて、施無畏与願の印相が対象形となり、左右がそれぞれ反対と成って居います、それと共に膝前衣襞も縦流れと横流れの変化区別を付けているのです。
正に差別変化を付けるための作意なのですが、それが許されるのですから、膝前衣文の流れの相違をむきに成って理由を探す事が、意味のない様にも思えて来ました。
（また次の日記で　並立する此の二尊を検証します）

一方の地蔵立像の膝前衣襞も、傾向は見えて来ました。ご案内の如くに、地蔵菩薩像は浄土思想の関連、側面の救済ので信仰を集めましたので、我が国では平安時代に成って初めて地蔵像は出現してます。（我が国に入る前、地蔵菩薩は僧形でなく、宝髻と条帛・裙の一般的菩薩の姿でした）その僧形となり、衲衣姿でその膝前衣襞が在ります。その襞の流れ方を見ますと、当初は如来像のそれと同じで、太腿には衣文なしのはちきれで、その脇に縦に衣襞が在るものでしたが、後に横流れのそれもそのすぐ後の時期に始まり、鎌倉時代では、地蔵の衲衣と阿弥陀の衲衣と区別したい為か、地蔵のそれはめっきり横流ればかりで、縦流れの膝前衣襞は少ないと感じました。

そういえば、以前にある方から小さめの地蔵像を手に取って拝見させて頂いた時に、差し首の像でしたので、もしかしたら如来像だったのに地蔵の頭が後から取付けられたかな？の気がしたことがありました。

その像の衲衣の膝前が縦流れでしたので…その時そう感じたのだと思います。　その時はまだ　膝前の流れに関心と知識は無かったのですが、おそらく潜在に同様の感じを持っていたので、その時そう感じたのかもしれません。

最後に、これまで仮説として述べました事、検証の為、著名仏像の枠を超えた、ネット画像検索の調査しますに、その傾向は在るも、例外も多くありで…この論説は成り立ちえないとギブアップに成ってしまいました。

この件につきまして、どなたか詳しい方、応援のご教授お願いします。

(2017年追記）