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 埼玉県熊谷市代の東善寺にある「木造阿弥陀如来立像」が鎌倉時代を代表する仏師、快慶(生没年不詳)の作品である可能性が極めて高いことが分かった。
 1200年代初期とみられる製作当時の姿をほぼ完全にとどめ、構造や表現方法などに快慶の特徴が複数確認された。熊谷市教育委員会が25日、記者会見で発表した。
 熊谷市教委によると、木造阿弥陀如来立像は平成29年11月、市史編纂(へんさん)のため市内の全仏像の調査中、東善寺で発見した。複数の仏像と一緒に箱に入っていたが、像の目鼻立ちや着衣の衣文表現などが快慶に共通しており、東京国立博物館に調査を依頼。X線コンピューター断層撮影(CT)の結果、仏像の構造の詳細や内部に紙包み(高さ36センチ、幅6・6センチ、厚さ4センチ)があることなどが分かった。
 それらによると、木造阿弥陀如来立像は像高69センチ。鼻先や手先の一部などを除きほぼ完全な形で残っている。材質は針葉樹系で、1本の木から像を彫り出した後、分割し、内部を空洞にして接ぎ合わせる割矧造(わりはぎづくり)という技法が使われていた。墨書の痕跡も確認された。
 また、紙包みには古文書のほか、毛髪や布らしい影があった。今後の調査で内容が明らかになれば、仏像の作者や制作を依頼した人物なども明らかになる可能性があるという。
 調査に立ち会った快慶研究の第一人者、清泉女子大の山本勉教授は「耳の上部が張っているところなど、快慶の作品にある特徴が複数みられる」と指摘した。
 快慶の阿弥陀如来立像は全国で14体が知られるが、すべて約80~100センチで、今回のものが最も小さい。
 市教委によると、仏像に快慶の銘がないため、快慶作と特定できないが、特徴などから快慶工房の作品「快慶様」に間違いはないという。快慶、快慶様の作品が県内で発見されたのは初めてで、関東でも栃木県足利市、同県益子町に次いで3例目。
 調査に参加した熊谷市史編集委員、林宏一さん(74)は「熊谷にとって貴重な文化財。埼玉、関東の彫刻史研究の上で重要な存在だ」と評価している。
 木造阿弥陀如来立像は3月16日から県立歴史と民族の博物館(さいたま市大宮区)の特別展「東国の地獄極楽」で展示される。