孤思庵の仏像ブログ

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Takさんからの投稿 8月15日・京都「清水寺」へ行って来ました。

Takさんからの投稿です。

●8月15日・京都「清水寺」へ行って来ました。



清水寺HP:  
http://www.kiyomizudera.or.jp/

七日詣りHP: 
http://www.kiyomizudera.or.jp/event/senniti.php

本尊お前立像: 
http://www.kiyomizudera.or.jp/pray.php

西国三十三所巡り: (清水寺・随求堂公開ほか特別拝観スケジュール)

http://www.saikoku33-1300years.jp/tokubetsuhaikan/2018-tokubetsuhaikan.pdf 



このくそ暑い最中に、よりによって京都でした。実は16日は「京都五山送り火」の日なのですが、宿が取れずにやむなく1泊での旅行となりまし
た。泣く泣く送り火の直前で京都にサヨナラすることとなりました。15日終戦の日にいつもの早朝の始発新幹線利用で、午前8時に京都駅下車。その脚で「清水
寺」へ。当初の計画では15日に京博+三十三間堂拝観、16日に清水寺だったのですが、思い直して新幹線車内で工程を逆にしました。そのほうが清水寺の行事にふさ
わしいかもしれないと思いました。バスは「清水道」ではなく乗降客の少ないはずの「五条坂」で下車。それでも下車するバス客は少なく拍子抜けでした。早朝にもかか
わらず今日は特別の日です。「西大谷本廟・大谷墓地」へ向かいます。お会いする方々は親子・家族連れ、子供や老人の多いのが目立ちます。みな線香とロウソク、バケ
ツと供花持参で、観光客の姿はいないほどで、この時期でなくては味わえない雰囲気です。清水寺に向かって急で狭い丘陵地にびっしりと墓所の立ち並ぶ様は圧巻で
す。坂道の途中に供花や線香を参拝客に売る店があり、墓参の準備を済ます人々で賑わっていました。正面奥に清水寺・三重塔が望まれる景観は、「大谷墓地」ならでは
の雰囲気です。観光客の多い商店の並ぶ参道を行かずに、この特別な景色はまさに「清水寺風土記」です。さすがにこの地では外国人観光客の姿は見かけませんでし
た。私の家族が眠る御殿場・富士小山の「富士霊園」はなだらかな大きな山全部が霊園で、富士山を望む墓所もゆったりとして広々として周囲が見渡せるところとは真
逆の景色には感心しました。お参りの人々の間を抜けてアップダウンの坂や階段を辿り、狭い墓所内の通路を通って、清水寺へ到着です。清水道から来る道と合流するせ
いで、一気に人出は多くなりました。よけい暑さが気になりだしました。ハンケチと扇子は手に持ちっぱなしです。

「三重塔」は高さ31mで、三重塔では国内最大級だそうです。塔内には大日如来像が安置されており、四周の壁には曼荼羅図などの密教世界が展覧されているそう
で、特別公開がいつあるのか期待したいです。「仁王門」は2003年に解体修理された新しい門で、建築上は16世紀初頭の再建当時の特徴を示す堂々たる楼門で
す。金剛力士像は迫力のある姿が印象的ですが、針金のネットが細かすぎて、容易にお姿を拝せないほどでした。「髄求堂」は外観のみで胎内めぐりは省
略。10月に「本尊・大髄求菩薩坐像」を拝しに伺うつもりでいます。「開山堂」を巡り、すぐ先の「轟門」(とどろきもん)から廻廊、本堂と続くのですが、轟門をく
ぐる前に周囲をひと眺めして本堂下の舞台や崖下の「錦雲渓」の叢林を眺めました。あいにく本堂は「檜皮屋根葺き替え工事」の改築修理のため、舞台の一
部を残し、大きく茶色のネットで覆いかぶされており、観光写真のようにはいきません。屋根の葺き替えは50年ぶりのものだそうで、本堂の屋根から堂全体を金属パイ
プで骨組みをした上にネットで覆いをしているものです。いつまでの工事なのか聞きそびれました。それでも清水寺は多くは近年の修復や日頃の手入れの関係で、金
色と朱色の鮮やかな堂塔が目立ちます。朱色と夏の叢林の色濃い緑のコントラストが鮮やかで、眼に痛いほどです。大きな檜皮葺きのきれいにカーブを描く寄棟造り
の「本堂」の前は早朝にもかかわらず長蛇の列です。「七日詣り」の行事で地元の方だけでなく外国人観光客も大勢見えています。普段拝せない「内々陣特別拝観」とい
うことですが、寺院にありがちなお堂の内々陣をぐるりと巡ることが出来るものです。千日詣りは一日の参詣が千日分の功徳に相当するというものだそうで、これは観音
信仰とともに誕生したそうです。

午前9時30分、廻廊での行列待ちはわずかで板張りの外陣に入り本堂内々陣に導かれました。堂内に入り少しは暑さがしのげました。まずは高い天井と梁組を観よう
と上に眼を向けましたが、かなり暗い堂内のせいで、判然としませんでした。でもやはり大きな堂内の厳粛さと迫力を感じました。内陣の正面護摩壇では、幾人かの僧
侶が祈祷をされているようでしたが、本尊厨子を奉祀する内々陣の裏手からが順路で、勝手に脚を向けるわけにはいきませんでした。順路に従い前の客の後についていく
と、壁外側には参詣のためのロウソクと願い事を記す用紙やお守り袋などを販売する職員?の大きな声が響いていました。内々陣裏側には参拝客の奉納するロウソ
ク棚が続く中に、小さな厨子に入った「十一面観音菩薩立像」が安置されていました。黒地の厨子の開扉された扉絵は極彩色のきれいなものでしたがなにせ暗い。一
般の観音様でしたが、40~50㎝ほどの像高ながら像態は綺麗に仕上がっており、2本の錫杖を持ち荘厳なども細緻に出来ていました。相貌は少し下膨れの丸顔で目
鼻は小さめに出来ており平凡な感じ。衣文の彫りは薄く、それでも流麗なバランスの取れた像態はさすがの仏さまでした。渦巻き状紋様の船形光背や頭飾などもきれい
な様子で感じの良い仏さまです。何も表示がついてないので困ります。堂内の職員に聞いても何も判りませんでした。多くの参拝客はロウソクを持ってきて、合掌し
た後ロウソクに火をつけ、階段状に設えた棚の空いた場所にロウソクを立てて合掌してお参りするのが主眼ですから、そちらの作業に忙しく仏さまには眼が行かな
い人が多いようでした。ノートにメモをしたくてもとにかく暗く、壁際に内陣・外陣から届く明かりでかろうじてメモが出来るほどでした。観音様の先にはもう一体、
不動明王像」が祀られていました。黒い肉体の精悍な顔つきの口元には、左右で牙が上下に剥出しており迫力ある不動明王です。やはり大きさは1m弱といったところ
で、羂索と宝剣を持し、薄朱色の火焔光背にははっきりと「迦楼羅」の顔が掘り出されていました。これも説明がありませんでした。

内々陣前面に回ると、待ってました、多くの拝する仏さまが立ち並んでいます。前面に回ってきたすぐの頭上には、天井近くに「風神像」が祀られ、全体に灰黒
色の像ですが雲乗の力強い姿はさすがだと思いました。内々陣出口間際には、「雷神像」が祀られ、赤い身体が見事で太鼓も天衣もちゃんとついており、何よりも雷神
像の腰からの着衣の彩色の文様が鮮やかに遺っておりきれいでしたが、もっとよく拝したいが暗くて難儀をしました。両神像の後ろの板壁には「藩」と思しき朱色の絵模
様らしきものが描かれていました。2mほどの一段高くなった須弥壇には両側に大きな黒塗りの厨子が置かれています。厨子の扉は開扉されていませんが、向かっ
て右に「脇侍・毘沙門天立像」、出口に近い向かって左に「脇侍・地蔵菩薩立像」が祀られてます。これも案内表示なしです。暗い中なので厨子の屋根型がよく判りませ
んでした。また、閉じられた厨子観音扉前には大きな「華鬘」(けまん)が掛けられていました。須弥壇の朱色柵の内部には「二十八部衆像」が立ち並びますが、「四天
王像」4体が最前列に本尊厨子を挟んで2体ずつ立ち、二十八部衆像は左右ともに3段・12体ずつが並んでいます。各像の像態は150㎝程度のもので、かなり精
緻に彫りの明瞭な印象と天衣や持物、光背など各像の特徴を表していて、中にははっきりした甲冑の文様や彩色が認められるものが幾体もありました。はっきり分かるの
は向かって左の1段目・阿修羅像(身体が赤色なので)、右側・1段目の吉祥天像、梵天像はすぐに確認が出来ました。各像共にもっとよく時間をかけて克明に拝した
かったのですが、後ろから途切れることなく列をなす多くの参拝客で、あまり落ち着いて長居が出来ませんでした。

それでも、中央黒塗り厨子前の「本尊・お前立・清水型十一面観音像」に脚を止め、ジックリと拝しました。仏さまの左右のロウソクの灯はちょっとした空気の動き
に揺らぎ、人々の心を安んじているのかもしれません。3本の紅白やらの紐が仏さまから須弥壇の前に垂れ下がり、多くの参拝客がその紐を掴み一生懸命にお祈りをして
いる姿が見受けられます。慈悲の観音の世界に没入出来る瞬間なのかもしれません。気のせいだけではなく、本当にお前立像は身体全体をかなり前傾して立たれているよ
うでした。陰影の強いロウソクの灯だけの世界で背後の黒色厨子の前で、人々に向かって今にも片足を踏み出しそうなまでに前のめりになった様子で、その心が推し量れ
るようです。故西村公朝師の調査によると、本尊は像高170㎝強、光背から台座までは260㎝でヒノキ材寄木造り素地仕上げ、白毫は水晶嵌入ということで、彼の記
録では詳細な観察結果から、創建時の本尊は焼失し、現本尊は鎌倉時代中期頃(1220年頃)の造像と推測しているようです。西村師の調査の内容がもっと分かれ
ば知りたいところなので、帰宅後少し調べようかな。研究者・専門家の調査・研究論文等があるでしょうから、調べる術はあるはず。眼の前のお前立像は像高138㎝と
いうことで本尊より一回り小さく素地仕上げではなく漆箔仕上げだそうです。そういえばお前立像には光背はついていません。そこが秘仏本尊との違いか?暗い中でも金
色に輝く姿ははっきりと眼に焼き付けます。お前立像は、秘仏本尊に瓜二つということなので、お前立像を拝すればおおよその事は判るものと思います。まず一般の千手
観音像と異なり、左右両脇上方の二臂を頭の上にかざし、頂上仏面の上で組んだ掌の上に「小如来化仏(光背付き)」を戴くという独特のスタイルをしています。大き
な金属製の頭飾には日輪月輪が付き、左右に側飾が下がり、額が狭く面長のふくよかな面相と均整の取れた像態が、ひときわ綺麗に拝することが出来ました。かなり暗く
てもオペラグラスで各部を詳細に確認しながら、その姿のすばらしさに感心しました。堂内の職員に前へ進むよう促されましたが、そのまま居座りを続けました。遠目に
は彫りのシャープな衣文の裾襞が明瞭に表された綺麗な仏さまです。胸前に合掌した手首には数珠のように金属製の飾環が巻き付き、腹前の二臂には宝鉢を戴く端
正な姿です。よく眼を凝らすと、両肩からの天衣が正面の四臂の間隙をぬって左右腰脚部ではくねりながら垂下しているのが分かり、綺麗で感激しました。特にロウソク
の灯の印影と揺らめきによる、漆黒の影と金色の仏さまのコントラストの強い荘厳な雰囲気は格別です。



内々陣から退出してからすぐに、ノートに書きこんだ内容を確認したら、暗いところでのメモだったせいか、自分でも判読不明の個所がいくつもあり、一生懸命
思い出しながらメモを追加しました。少し本堂舞台から周囲を見渡しながら休憩し腕時計を見たら、午前11時30分過ぎでした。内々陣には2時間も居座ったことにな
りました。驚き!そんなに長く拝観していたなんて!お前立像をオペラグラスで鑑賞している時には、大阪(?)の夫婦が「私たちにも見せて!」と求めてきて、ちょっ
と2人にオペラグラスを渡したこともありました。オペラグラスなどで見ている人はいませんから気になったのでしょう。確かに、以前の自分なら内々陣拝
観は30分で終わったことでしょう。わかっている人に話しを聞くか、予習でもしてこなければ、肝心の時と場所で漫然として巡っても記憶に残らないでしょう。今
日15日に来た理由と巡った堂塔なども含めて、これまでとは違った一日になったと感じました。本堂舞台から「奥の院」、「音羽の滝」などを巡り、一般観光客の仲間
入りをしました。奥の院には、昨年春の奈良博「快慶展」で展示されていた「奥の院・本尊・千手観音坐像」には皆さんも感嘆したと思います。残念ながら普段は非公
開です。それでも奥の院の堂廊下や外陣の柱や梁桁・肘木などの組み物(斗栱:ときょう)には、遠目にもはっきりとした彩色のはっきりした装飾文様が認められ、綺
麗で関心しました。梁などには亀甲文様の中に六角花弁文様が表わされていたり、「蟇股」(かえるまた)には丸枠の中に転法輪文様と、丸枠の外には鉄鎖甲文様(あの
テトラポット形の)が描かれ、その上の木組みには花弁文様や琴線文様が「繧繝文様」(うんげんもんよう)の色彩で描かれており、手を伸ばせば触れられるほどのもの
でした。

成就院」へは次回の楽しみとしました。午後1時過ぎに清水寺をいったん辞しました。



本来ならばこのままで終わるところを、今回は「七日詣り」の夜の部を体験しました。いったん近在の「高台寺」に立寄り、歩き回るのをやめて寺院拝観よりも暑さ回
避に時間を費やしました。再度清水寺に戻り午後7時から8時まで、陽が暮れ近くの人の顔もおぼろげになったころから、外部からの灯りも無い状態で、境内の提
灯に明かりが入り、本堂内にも提灯とロウソクの明かりがともされ、再度内々陣をロウソクの灯りで巡り、二十八部衆像などの火の照らされた印影のはっきりとし
た姿に、別の仏さまを拝するようで、ワクワクしました。仏さまの半分は陰になって黒くしか観えない、シルエットのみといったところも多いのですが、ロウソク
の灯の「揺らぎ」によって幻想的な世界の中に佇んでいるようで、緊張しました。いにしえの人々はこうした雰囲気の中で、仏さまに一生懸命お祈りをして暮らしていた
のだと思うのですが、やはり周囲の事が気になって現代では昔の人々の気持ちが掴めないようです。仏さまの違った鑑賞法となりました。でも、堂内は午前中の内々陣拝
観も日中でも暗く、夜間の拝観とどのように違ったのかな?と考えさせられました。お寺の僧侶によるお祈りの時間があったのでしょうが、私はその場に臨んでいなかっ
たので、雰囲気の数分の一の感動を逃したかもしれません。違いは森閑とした雰囲気と夜の空気、微かに響く靴音、灯りの揺らぎですかね。明日の五山送り火は残念なが
ら拝見出来ないので、この夜をゆっくりと過ごすつもりです。



清水寺の他の拝観個所についてのレポは省略します。これからの清水寺訪問の予定は、日本最古の巡礼路「西国三十三所巡り」草創1300年記念・随求堂の「本
尊・大随求菩薩坐像公開」(随求堂・222年ぶりの居開帳:10月5日・金~10月15日・月:HP参照)と「成就院庭園特別拝観(夜間拝観も含む)」
(11月17日・土~12月2日・日)です。



2018年8月18日 AM1:00  Tak