孤思庵の仏像ブログ

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『観音の里の祈りとくらし展-びわ湖・長浜のホトケたち-』 を観て

29日(土曜)に、東京藝術大学大学美術館 展覧会『観音の里の祈りとくらし展-びわ湖・長浜のホトケたち-』 を「仏像愛好の集」の仲間で団体鑑賞会をして8名の参集が在りました。
 
http://www.geidai.ac.jp/museum/exhibit/2014/nagahama/nagahama.jpg 
 
 

 
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長浜市には130躯の観音が在って、今回は18躯の仏像その全てが東京には初進出との事で、中にはお堂から初めて出た仏像もあるとの事でした。今回は、全部が私の知らない仏像でした。そのうち、重要文化財日吉神社 千手観音 ・ 善隆寺 十一面観音 ・ 総持寺 聖観音 の3躯だけです。
【列番2】日吉神社 千手観音    【列番5】善隆寺 十一面観音    【列番8】総持寺 聖観音

私の仏像鑑賞の信条は評価を得てる秀作をたび重ねて観るですので、今回の出品リストと入場料の安さに期待はしてませんでした。

ところが実際 鑑賞を始めますと、どれが重要文化財だのは気にせずで、なかなかの美仏揃いだと鑑賞いたしました。

そしてその中に、これまで見て来た有名観音像に負けない美仏が数体あるのに感心しました。

これまで、国宝は良しとしても、重文では、秀作をと ターゲットを絞る主義でしたが・・・今回は素直に観させてもらい、その美しさに感じ入りました。 文化財のランクも、お寺の名前も気にせずで観てまいりました。

今回 そんなで自分の仏像趣味も、原点はその美しさなのだと気付かされた次第です。

入場料500円は有難いので、是非に平日にのすいているを狙い再訪問と決めました。



もう記憶力低下のこの頃、新たに仏像の名称と その詳細は覚えてられませんので、強い印象で自分なりに覚えている事と 出品目録と同展のウエブ画像を照合しながら、この日記を書きます。


まずは、誤解が在ってはと思い、皆さんが周知の事ですが、老婆心で書きます。今回の展覧会は「地元民衆の信仰で護り継がれて来た仏像」が前面に押し出されているのですが、それを決して地元の信仰が造像したと誤解はならないです。

まず、この地は近畿で、古くから中央文化圏に在った事を認識します。最初[列品番号1]の菅山寺の十一面観音が木心乾漆像である事で分かります。(漆は貴重で統制品、で乾漆像は官営工房でしか扱えなかったのでは?)そして此処の仏像達その作風を観れば、地方風は見られず皆中央風なのです。
 
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【列品番号1】の菅山寺 11面観音
 

また此処の立地は叡山のお膝下で、寺院が多く在ったのです。おそらくは当初時期は殆どが天台系の寺院だったと思います。(但し、後の天台・真言の交流で今回出品の寺院の中には真言宗寺院もも散見されました)

【列品番号6】の竹蓮寺の伝聖観音坐像の幅広の天冠台と思っていたものは、会場で良く見れば、なんと宝冠の下の地髪部の螺髪ではないですか!まさしく天台の常行堂本尊に多い宝冠阿弥陀なのです。
 
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 【列品番号6】の 竹蓮寺 伝聖観音坐像(宝冠阿弥陀) 

この地は発端は天台を中心とした仏教文化圏だったものがその後の変遷で廃寺と成る寺が続出そして放置の憂き目を見る仏像達が地域の民衆が護ったという事なのでしょう。


中でも印象に深かったのは戦国の兵火から逃れるため、村人ら により土中に埋められ、その後、余呉川で洗い清められて安置されたと伝わる。【列品番号4】の安念寺の いも観音(如来形)の眼と口は朽ち減った像なれど、その眼と口は上部からの照明が相まって浮き映え、通常の顔とは異なれど、不思議とかわいらしき美しさとを感じさせる表現と成っていました。並列の【列品番号3】の いも観音(菩薩形)は反対に不気味さを感じさせます。もはや造られた像容ではなしに、人智の仕業でない朽損による、エイジング(経時変化)のたくまぬ芸術性と云った感です。
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     【列品番号4】の安念寺の いも観音(如来形)と【列品番号3】同寺いも観音(如来形)
 
陳列の重要文化財の三像に注目しますと、【列品番号2】日吉神社十一面は等身大ほどで展示の中では一番大きいものです。光背形装飾壁バック付の陳列で、出品中の看板的扱いですは一番大きいものです。光背形装飾壁バック付の陳列で、出品中の看板的扱いです。
 
これも戦火を避けるため川に沈めて護ったとの事で腕、頭上面共に多く欠失していて保存状態が優良とは言えませんのに、がこれが他とはランクの違う重文と何が違うか観察しました。
先述の【列品番号1】の菅山寺の像に次いで古く9世紀だそうです。そういえば脛部分の衣襞は頭が丸く 天平の乾漆像の雰囲気です。そうした時代の節目の作風が評価されているのでしょうか。
 
 
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 【列品番号2】日吉神社十一面観音
 


二つ目の重文は【列品番号5】善隆寺 十一面でして、大きさはさほどでは無しの約1メートルぐらいです。近年に博物館の鑑定でサクラ材と分かったそうです。頂上仏面から足の先まで一木で彫られ、一つの継ぎ目もなしが珍しいらしい、内刳(うちぐり・注)もされていない。端正な顔立ち、均整のとれたプロポーション、整然と等間隔・同心円に配置された衣文線と見て行くうちに評価が上がります 。
 特筆すべきは、通常なら頂上仏面は螺髪如来形ですが、本像は頂上面は宝髻に宝冠を戴く菩薩形なのです。鬢髪が耳輪を渡る耳上に渡し、本面と同形なのです。これは向源寺十一面観音立像(平安初期)にも通ずるもので、その影響を受けた平安時代中期(11世紀前半)の作と考えられてます。
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【列品番号5】善隆寺 十一面観音

尚、本像は保存状態が大変に良く右手は、なかなかお目にかかれない平安時代当初のままの御手先ですので、ぷっくりとした親指の付け根や たおやかな指先などが見所です。 


最後の重文は【列品番号8】の総持寺聖観音ですがどうも人気はいまいちの様で映像を探すのにいささか苦労したほどです。
11世紀の藤原彫刻の衣文の薄さは感じられるも、定型の如来坐像で無いので、定朝様に合致化なのかそれ以前なのかが小生には分かりません。特徴と云えばその時代風の左右に巻かれた渦巻の宝髻なのですが、会場の展示は、後の時代に取り付けられた宝冠が付いたままで、それが邪魔してみられないのは残念です。
 
 
            【列品番号8】の総持寺聖観音
 
 
 
 
尚、今回は滋賀県文化財指定は来ていません。ここから長浜市指定文化財と成りますが、同寺の、【列品番号9】千手観音の方が12世紀と時代は下がり市指定文化財ですが、ウエブなどでも、重文の聖観音よりも人気はまさる扱いでした。一見に平安時代中期からの穏やかな表現を取り、仏師定朝様と分かる美仏です。金ぴかで ありありと後補と分かる持物の完備には現信仰の深さを感じて、これはこれで好感を持ちました。

    http://1.bp.blogspot.com/-Vtn24uHqHUg/Uy6GHMcZnAI/AAAAAAAAEvU/CjvOD7dXdu4/s1600/_IMG_5671.JPG 、クリックすると新しいウィンドウで開きます
                【列品番号9】総持寺の千手観音
 
 

文化財の指定に於いて、同時代で同様の出来で同様の保存状態ならば大きい像の方が優先されると聞きました。また良い仏像の少ない地方の方が指定に有利とも聞きます。

そんな事を思いながら 重文と長浜市指定文化財とを見比べてました。

うーん当たってるかどうかは解りませんが、重文指定は出来の良さに、個性的を併せ持っているような気がします。そういえば著名仏像は写真でも何処の度の像と言い当てられますが・・・今回長浜市指定文化財の中にはこの重文像3躯より美しいと感じるものも散見しました。

しかし、観音寺や道明寺の十一面に居ているとは言えても個性的ではないのです。 美しさの定義は個性では無く標準のように思います。如何でしょうか? 

以前顔学で日本人の顔のパーツとその位置的バランスを平均した標準の顔を合成したら美人に成ったとの事です。

私はあまり好みで無ないのですが向原寺観音堂の十一面さんは個性的で国宝に相応しいと言えるようです。

でも反対に言えばこの付近の観音像中には、【列品番号5】の善隆寺 十一面像の様に大いに向原寺の十一面の影響を受けたものもある事でしょう。

国宝然としたものの良さもあるでしょうが、個性的でなしの美しいお顔の方に余計癒されます。今回は有名物仏像で無いものの中にこんな美しい仏像が在るのを発見しました。
で是非のまた、今度は平日にゆっくりと鑑賞したく思ってます。

幸い500円と入場料は安価で有難く複数訪問できそうです。一度の鑑賞では唯 会期の短さに急かされてまた近々行く事にします。一緒に付き合いませんか?

この頃気に入った展覧会は複数行きます。一度で見切れないのは力量不足なのでしょうが、長時間鑑賞では、もう根気が維持できずで、一拍於いて観た方が新たな発見があるようです。先の興福寺 国宝仏頭展には3回か4回行ってしまいました。


今回の『観音の里の祈りとくらし展-びわ湖・長浜のホトケたち-』の観音たちを観て気付いた事がありました。
通常の観音像の印契は左手は与願院が殆どですのに、この展示の観音の多くに、右手が与願印でなしに左手どもつ未開敷蓮華の近くに持ってきているものが多かったです。調べましたら安慰印と云うらしいを勉強しました。
http://1.bp.blogspot.com/-K_eMzKJFE4M/Uy6F9V7lTKI/AAAAAAAAEvM/TAtdtfpaEy0/s1600/_IMG_5560.JPG http://kitabiwako.jp/wp_sys/wp-content/uploads/2014/03/b6e4950b9ba4e51b94024c75860d9842-203x300.jpg http://www.jiji.com/news/handmade/topic/d4_museum/nak143-5-shou.jpg http://www.jiji.com/news/handmade/topic/d4_museum/nak143-12-shouritsu.jpg
         右手が安慰印の観音たち
 
 
  右手が与願印の観音たち

今度はこの事をの日記にしますとの予告で一度筆を置きます。
 
 
★以下は「時事ドットコム」>写真特集.>発掘物・貴重品>観音の里展 より 
 
 
 【列品番号1】菅山寺 11面観音・【列番2】日吉神社十一面観音 ・【列番3】安念寺 菩薩形立像 
 
 
 

【列番4】の安念寺如来形立像・【列番5】善隆寺 十一面観音・【列番6】竹蓮寺 伝聖観音(宝冠阿弥陀) 

 
 
【列番7】長浜城歴史博 聖観音・【列番8】総持寺 聖観音・【列番9】総持寺の千手観音
 
 
 
 【列番10】田中自治会 十一面・【列番11】常楽寺 聖観音・【列番12】宝厳寺竹生島 聖観音
 
 
 
【列番13】岡本神社 千手観音・【列番14】阿弥陀寺 聖観音・【列番15】尊住院 聖観音
 
 
 
【16】大浦十一面帯観音堂 十一面観音【列番17】集福寺 聖観音・【列番18】横山神社馬頭観音
 
 
 
 
以下『観音の里の祈りとくらし展-びわ湖・長浜のホトケたち-』会場風景
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以上『観音の里の祈りとくらし展-びわ湖・長浜のホトケたち-』会場風景
 
 
 
 
 
★尚 『観音の里の祈りとくらし展を入場者は同時開催中の藝大コレクション展 ―春の名品選―を無料で入場 鑑賞できます。
 

「藝大コレクション展 - 春の名品選 - 」

東京藝術大学 大学美術館・陳列館

 
 
  
 
 


★【次回の「仏像愛好の集in東博」は4月5日です。詳細は前の日記を御覧下さい】
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