東京藝大 修復彫刻研究室報告発表展2019 から 【その1】
6月9日 「東京藝大 修復彫刻研究室報告発表展2019」期間中の内の
トークイベント((口頭発表会)がった6月9日には、我が仏像愛好の集」
のメンバーの7名が参集しました。それぞれに鑑賞された、事と思います。 今回のメインはチラシにその画像があるように、修復された楽法寺 金剛力
士像となってます。 その修復金剛力士像の見事さは、同行のお仲間の皆
さんも感じられていました。私にも秀作と感じられるものでした。同時に、この像の修復研究は興味深いものでありました。
まず、今回勉強になりましたのは、この像高2メートルの差に木彫仏であ
りながら、重量が30キログラムほど、その軽さは 執拗な内繰りの程度に
よるもので、像の厚みは,薄いところで1センチメートル程から、厚い部分
でも4センチ程までとのことでした。そもそも仏像の内繰りの目的は像の
干割れ防止のためとは知っていましたが、其の干割れは、完成の開眼後、
何十年単位での問題と思っていましたが、修復者の解説によりますと、
作仏 彫刻をしているt時から干割れしてくるとの説明を受け、今までの
概念を覆されるのでした。当時の用材は、現在の乾燥された木材の概念とは、程遠く、かなり生木に近い水分を含んだ用材だったと思われます。
もう一つ学んだことは、カヤ材はヒノキ材とは相違で、かなり割り剥が
しにくい材だったを教わりました。それは逆に、干割れはヒノキより仏は
しにくいことになりますが・・・、それでも干割対策は必要で、かなり薄
つくりの仏像にしたようです。
これまで、割り剥造りでは、剥ぎ方を気にしていましたが、今回の修復
研究発表で、剥がれ、内刳りを済ませた後の半身状態の仏像の接合を学べ
ました。 膠が接合の接着剤と思っていましたが、 今回は膠でなしに、
麦漆が接着剤に選ばれていました。麦漆、現在は生漆に小麦粉を混ぜた
もので,接着性に効果的と聞き及びますが、小麦粉のない時代にはそうは
行かず、当時の木屎漆として漆に混入する繊維質のつなぎ材(乾燥後の
収縮による壁のひび割れを防止する)に楡の繊維を使ったを参考に、今回
の修復作業の麦漆の代替えとして、漆に楡繊維を混ぜて、継ぎ剤的なパテ
の性質をも持った接着剤として用いたそうです。これは割り剥時に、ヒノキ
とは相違で、カヤの割り剥面があれていて、接合面に隙間が出ていて、膠
の様な液状で粘性の弱いものでは流れてしまい うまくゆかないので、
パテの性質をも持った接着剤として、上記の接着剤用いたそうです。
それとは別で、膠を避けた理由があったそうです。膠は獣の革や骨や内臓
から作りますのでから、仏像に使用に、はばかったのでは、との解説でした。
今まで仏像に膠は簡便ですが、最適でない、その理由は、膠は経時変化に
強くはなく、100年は持たないからと聞いていたのですが・・・、信仰
上の理由もあるとは気づいていませんでした。
割り剥接合の補強に今回の修復では、 鎹も使用されるとの事でしたが、 その使用説明に、また新智識でした、 鎹は仏像本体を傷付けることを避
けてチギリに打つとの事でした。 古い鎹の跡に,新しい鎹を打つ時には、鎹が効くように、鎹を抜いた穴に埋木をして、その埋木に新しい鎹を打つ
とは以前に聞いていましたが、チギリに打つ? チギリて?? 説明を受け
てわかりました。チギリとは 二つの二等辺三角形の頂点を重ねるように
置いたときにできる、鼓状の形の木片部品です。千切とも書くようですが、その作用からすると チギリとは千切よりも契がふさわしく思えます。